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Research Director Dr. Shinsuke Abe

Dr. Shinsuke Abe

Associate Professor, Department of Aerospace Engineering, College of Science and Technology, Nihon University

(English version coming soon)

――人工流れ星プロジェクトでは、どのような役割を担当されているのですか?
「担当しているのは流れ星の素(もと)となる「流星源」の開発です。一つのエンターテインメント事業として楽しんでいただくためには、流れ星は明るく光らなければならない。さらには色をつけたり、きれいに尾を引くようにする必要もある。このような課題をクリアーするために、材料や構造をテストしながら流星源を開発するのが私の役割になります。  
二つ目は高感度の分光カメラや、レーダーを使った流れ星の観測ですね。光や軌道を測定・分析します。すでに昼夜や天候の良し悪しを問わずにレーダーで観測できる手段も開発済みで、地上からの観測に役立っています。  
三つ目が理論的な探求。さまざまなデータを取りながら、流れ星が光る物理化学的な現象を、より精緻な理論モデルで解明できるようにしていく。これは学術的な研究だけでなく、私たちの事業にとっても大きく役立つはずです」

――技術的に大変なのは?
「やはり流れ星をいかに明るく発光させるかだと思います。人工流れ星は自然の流れ星に比べて、大気圏に突入してくるスピードがかなり遅いです。一方、流れ星の発光する明るさは、速度の約三乗に比例するという物理法則がある。ですから、天然の石を大気圏外からポンと落としても、美しい流れ星にはならないんです。  
同じく重要な作業としては、軌道計算もあります。流れ星はその身をプラズマや光や熱にしながら落下してきますので、途中でどんどん軽くなり、最後はほぼすべてが蒸発してしまいます。当然、運動の特性は変わってくる。さらに、流れ星の軌道は場所や季節で変化する大気の状態にも左右される。これらの膨大なパラメーターをすべて計算に入れたうえで、自分たちが狙った通りの軌道に流星源を放出できるモデルを構築するのがポイントになります」

――研究開発の進捗状況はいかがでしょう?
「たとえば流星発光実験に関しては、すでにJAXA宇宙科学研究所のアーク加熱風洞と呼ばれる設備でテストを行い、自然の素材――2013年にロシアに落ちてきたチェリャビンスク隕石の破片を同じ条件で発光させた場合よりも、約67倍(4.6等級相当)明るく発光させることに成功しています(2015年8月)。そのときはあまりの明るさに驚いたほどでした。
流れ星が何秒間、どのくらいの明るさで流れるかは、大気に突入する速度と角度によってほぼ決まってきますが、この種の軌道計算に関しても、チェコやカナダで発表された研究成果を参考にしながら、佐原先生とともにシミュレーションモデルの精緻化を進めています。もちろん実際に宇宙から放出した場合に何等級になるのか、狙った通りの軌道で飛ぶかというのは実証実験をしてみないとわからない部分がありますが、開発は予定通り進んでいると断言できます」

――天然隕石の素材よりも明るく発光するというのはすごいですね。
「ええ、しかも本来ならば、さほど明るく発光するはずのないスピードで落下してくるわけですから(笑)。
でも個人的にはなんら驚きではないというか。流れ星の原理に精通していれば、明るく発光させる方法は考え出すことができますし、技術的なハードルを越えるアイディアを温めている研究者は他にもいるはずです。しかしアイディアを具体的な形にしようとする人はほとんどいなかった。現に私たちがやっているような実験を行い、流星源まで開発した人はNASAにもいませんし」